【ヴィッセル神戸 試合分析】数的不利の70分間で見えた希望と課題:J1百年構想リーグ 第3節 清水戦
【ヴィッセル神戸 試合分析】数的不利の70分間で見えた希望と課題:J1百年構想リーグ 第3節 清水戦
2026年2月21日、アイスタで行われた明治安田J1百年構想リーグ 地域リーグラウンド WESTグループ 第3節、我らがヴィッセル神戸はアウェイで清水エスパルスと激突しました。結果は0-1での敗戦となり、清水に今季初勝利を献上する形となりましたが、単なる敗戦として片付けるには惜しい、非常に多くの示唆に富んだ90分間でした。本記事では、70分以上を10人で戦い抜いたヴィッセル神戸の視点から、この試合の戦術的なポイントや選手たちのパフォーマンスを深掘りして分析します。
試合結果
● 0-1
試合を決定づけた前半18分の「DOGSO」とミヒャエル・スキッベ監督の修正力
試合の流れを大きく変えたのは、前半18分の山川哲史の一発退場劇でした。自陣深くから前線に送られたボールに対し、清水のオ・セフンがバックヘッドで流し、そこに猛スピードで駆け上がってきた千葉寛汰が反応しました。ハーフウェーラインを越えたあたりで山川の手が千葉にかかり、「決定的な得点機会の阻止(DOGSO)」と判定されレッドカードが提示されました。
結果論にはなりますが、トップスピードの千葉に対し、待ち構える形となった山川は、ボールを奪いにいくのではなく、千葉を左に押し出すように遅らせるプレーが最善だったかもしれません。しかし、これまでキャプテンとしてチームを牽引し、何度も献身的なプレーで救ってきた山川にとって、この経験は間違いなく今後の糧となるはずです。
この数的不利に対し、ミヒャエル・スキッベ監督は即座に動き、インサイドハーフの乾貴士を下げてンドカ・ボニフェイスを投入しました。サッカーにおいて数的不利に陥った際の鉄則の1つである「守備組織の維持」を最優先し、選手間の距離を詰めることでスペースを最小化したのです。公式戦デビューながら不運な形で退場となった乾ですが、ベンチに下がる際に山川を気遣うベテランらしい振る舞いを見せ、コンディションの良さも窺わせました。
「-1」でもやれた事実。前半終了間際の決定機に見る清水の守備の隙
70分以上を10人で戦いながらも、試合後の選手たちからは「勝てる試合であった」という声が聞かれました。その言葉を証明するように、前半アディショナルタイムにはヴィッセルの流れるような連携から決定機が生まれています。
このシーンは、アンカーの鍬先祐弥が相手の意図を察知してパスコースを限定したことから始まりました。井手口陽介と広瀬陸斗が連動してボールを奪い、井手口から前線の小松蓮へ正確なパスが通ります。小松からの落としを受けた鍬先が再び小松へ繋ぎ、そこから左スペースを駆け上がった永戸勝也へ展開。永戸のクロスからのこぼれ球を、最後は佐々木大樹がフェイントで相手を動かしてシュートを放ちました。枠を捉えていたものの、惜しくも相手GKに弾き出されました。
この一連の攻撃には、得点を奪うための重要なポイントが隠されていました。清水の守備陣は「人は管理していた」ものの、「スペースは管理していなかった」のです。井手口がボールを奪った瞬間、清水は最も警戒すべき武藤嘉紀や佐々木を離してしまっており、ヴィッセルの前線には動くための広大なスペースがありました。また、小松がボールを受けた際、実は右サイドで武藤が前を向ける絶好のポジションにいました。ここで右に展開できていれば、ゴールを陥れていた可能性は高かったでしょう。1人少ない状況でも、「時間とスペースを味方に渡す」という概念を持ち続ければ、十分につけ入る隙があったことを示しています。
PKによる失点と、それ以上の輝きを放った鍬先祐弥
後半に入り48分、清水のコーナーキックの流れから、ペナルティエリア内での鍬先のプレーがVARおよびオンフィールドレビュー(OFR)の結果、ハンドと判定されPKを献上してしまいます。55分にオ・セフンにこれを決められ、これが決勝点となりました。
しかし、この不運なハンド判定があったものの、鍬先の試合を通じたパフォーマンスは出色の出来でした。PKのシーンでも相手に対していち早く反応して詰めており、アンカーとして最終ラインからボールを引き出し、清水の激しいプレスにも巧みに対応していました。ボール保持時には巧く前を向き、チーム全体を前に向け続けるなど、扇原貴宏を脅かす存在へと目覚ましい成長を遂げていることを証明しました。
浮き彫りになった課題:後半シュート0本と「ピッチ上の監督」の不在
勝機はあったものの、後半のヴィッセルのシュート数は0本に終わりました。数的不利のカバーに奔走するあまり、チーム全体が攻め急いでしまい、スキッベ監督が求める「時間とスペースを貯めながら前進するサッカー」ではなく、ロングボールを多用する相手のペースに巻き込まれてしまったことが最大の反省点と言えます。
前線で身体を張り続けた小松も、ファーストディフェンダーとして守備面で大きく貢献した一方で、攻撃面ではロングボールのターゲットとして孤立しがちでした。彼の高さを活かすには、もっとペナルティエリアに近い高い位置でのプレーが必要でしょう。さらに、清水のオ・セフンのフィジカルと、千葉の高いキープ力による仕掛けが、ヴィッセルの守備陣にボディブローのように効き、徐々に主導権を奪われていきました。
そしてもう一つ、この苦しい展開の中で痛感させられたのが、酒井高徳のような「ピッチ上の監督」の不在です。本来その役割を担うべき山川も退場しており、自陣深くに押し込まれた際、選手同士で細かくポジションを指示し合い、チームを鼓舞する声が不足していました。ヴィッセルの若い選手たちには、過去の実績に臆することなく、自らがピッチ上のリーダーとして振る舞う意識が求められます。
次戦・福岡戦に向けて
開幕からの5連戦を終え、次戦は中5日で迎えるホーム・ノエビアスタジアム神戸でのアビスパ福岡戦です。負傷者が増えている現状は懸念材料ですが、同時にこれは若い選手たちにとって千載一遇のチャンスでもあります。ジョホール戦でデビューした山田海斗のように、トレーニングでアピールすれば出場機会は確実に巡ってきます。
数的不利という極めて厳しい状況下でも、最後まで「勝てる」という自信を失わず、高い気迫とパフォーマンスを見せた選手たちを誇りに思います。次節こそはホームのサポーターの前で、全員が自信を持ってピッチに立ち、勝利という結果でさらなる飛躍を遂げてくれることを期待しましょう。スタジアムをヴィッセルカラーに染め、共に戦いましょう!
※この記事は、DAZN観戦とJリーグハイライト・ヴィッセル神戸「覆面記者の目」の解説をもとに作成しています。